2016.03.02

「津波・原子力災害被災地域雇用」の補助金制度が復興支援が産業再生の妨げに

「津波・原子力災害被災地域雇用」の補助金制度

東日本大震災の被災地域での産業復興施策の1つである「津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金制度」について、岩手、宮城両県で採択された事業の4分の1以上が申請前に辞退していることが分かりました。

この補助金制度は、東日本大震災において、津波や原子力などで特に大きな被害を受けた地域で、避難指示が解除された地域を中心に、新たに工場や施設を設立する際、補助金が受け取れる制度です。

補助金制度の対象地域は、青森、岩手、宮城、福島、茨城5県で、公募により採択された事業者が、申請できる流れとなっています。雇用の創出を目指し、制定された制度であるため、交付要件としては、投下固定資産額に応じて決められた新規地元雇用者数を満たしていることが重要となってきます。例えば、投下固定資産額が5千万以上であれば新たに3人以上の地元雇用をしなければなりません

今回、岩手県と宮城県で、これまで5回の公募により採択された198の事業者のうち、50以上の事業者が補助金の申請を辞退しており、その原因として、交付要件である地元雇用の規定の人数を集めることが厳しいという事があげられています。被災地では、復興需要の高まりなどで、建設業などの特定の業種や、都市部などの特定の地域を中心に人材が集まり、沿岸部を中心とする産業再生の方は、なかなか進まないという現状があるのです。そのため、宮城県では、有効求人倍率を見ても、都市部の仙台と沿岸部の気仙沼では、仙台が1.34倍に対して、気仙沼が2.15と沿岸部の人手不足が深刻な事が分かります。宮城県の産業立地推進課の担当者は「公共工事が延び延びになっているのが原因。辞退者はまだ増えるだろう」と話しています。

経済産業省は、この補助金制度を今年度で終了する予定でしたが、予算枠2000億円の残額発生が見込まれ、また、目標の6000人正規雇用創出も達成していないため、来年度も継続する見込みです。

 

【スタピ編集部コメント】
東日本大震災からまもなく5年が経とうとしています。岩手県、宮城県、福島県では、今なお、仮設住宅で生活を行う被災者が13万人以上おり、復興が進んでおりません。今回、被災地の産業復興ということで、被災地に住む被災者の雇用を増やし、地域経済を活性させるという意図をもった補助金制度ですが、被災地の労働者を集めることができないのはなぜでしょうか。

根本的には、震災後、多くの人が、他県や沿岸部から離れた都市部に移住してしまい、人口自体が急激に減少しているということはありますが、もっとも大きな原因は、賃金にあると考えられます。沿岸部の水産加工工業などと比べると、都市部の復興事業のほうが比較的給与が高く、被災地の産業復興のために事業を始めよと考えても、人材が集まりません。復興事業が長期化していることも問題ですが、補助金の申請を辞退し、事業自体を断念する事業者が増加してきます。

産業再生に向け、もっと労働者の目を向ける必要があるのではないでしょうか。

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