2016.02.24

個人事業主(フリーランス)が株式会社を設立する12のメリット・8のデメリット

個人事業主(フリーランス)の設立メリット・デメリット

ここでは、個人事業主(フリーランス)が株式会社を設立する12のメリットと8のデメリットを紹介しています。個人事業主の方で、株式会社の設立を考えている方は参考にしてみてください。

【目次】
株式会社を設立する12のメリット
1.赤字でも給料がもらえる
2.赤字を繰り越せる期間が個人事業主の3倍
3.個人事業主に比べて金融機関の融資が受けられやすくなる
4.自己の不動産を会社に賃貸として貸せる
5.売上から源泉所得税が引かれない
6.個人事業主に比べて生命保険や傷害保険への加入がお得になる
7.決算期を好きな時期に組める
8.個人事業主に比べて事業の承継がしやすい
9.名刺に「社長」と書ける
10.経営者も社会保険(健康保険+厚生年金保険)に入れる
11.個人事業に比べて助成金の種類が豊富
12.個人事業の時の資産や負債を引き継げる

株式会社設立の8のデメリット
1.交際費は800万円までしか経費にできない
2.税務申告のための会計処理が複雑になる
3.会社を乗っ取られる危険がある
4.株主総会を開かなければならない
5.社会保険への加入が義務づけられている
6.確定申告後の還付加算金がなくなる
7.さまざまなサービス料金が高くなる
8.会社の財産は株式の所有を通してしか管理できない

 

株式会社を設立する12のメリット

株式会社のメリット

個人事業主が株式会社を設立するメリットは多くあります。ここでは、株式会社の12のメリットをご紹介しています。どういったメリットがあるのか確認してみましょう。また、個人事業主から株式会社設立を行った場合には、信頼度が向上し、取引先ともスムーズになる点に関しては、当たり前のことなので、メリットには入っておりません。

 

1.赤字でも給料がもらえる

株式会社を設立すると、会社が赤字でも給与がもらえるというメリットがあります。個人事業主の場合、赤字になると、家計と事業の区別がはっきりないため、赤字と言うことは、自分の所得が無いということになります。

しかし、株式会社の社長(経営者)は、役員報酬という形で給与をもらっているため、会社の必要経費として、資金操りの都合がつく限りは、(経営が苦しいのは間違いありませんが)赤字でも給与を受け取ることが保障されているのです。

 

2.赤字を繰り越せる期間が個人事業主の3倍

株式会社を設立すると、法人税の申告の際に、赤字を翌年以降9年間(平成28年4月からは10年間)繰り越せるという制度があります。これを「繰越欠損金の所得控除」といいます。個人事業主の場合も赤字を繰り越すことはできますが、繰り越しが出来る期間が3年間のため、株式会社を設立すると、繰り越し機関が3倍になるということです。

赤字を繰り越しすることで、利益が出た年の納税額から、その年以前の繰り越した分の赤字を引くことができ、利益が出た年でも、納税額を減らすことができます。また、もし、9年後の利益額がほぼ決まっている状態であれば、個人の給与を上げて、納税の合計金額を平均化することで、納税額を減らすことができます。そのため、9年間分の損失を利益が出た年にまとめて控除することができます。

 

3.個人事業主に比べて金融機関の融資が受けられやすくなる

株式会社を設立すると個人事業主に比べて金融機関の融資が受けられやすくなります。なぜ、銀行の融資を受けやすくなるかというと、以下の理由が挙げられます。

 

自分以外の保証人がいらなくなる

銀行で融資を受ける際に、個人事業主の場合、家計と事業のお金の区別があまりないつかないため、銀行は会社に比べて融資条件を厳しくしています。そのため、個人事業主は、自分の他に保証人をつけることを要求される場合が多くなっています。

しかし株式会社の場合、個人と会社の財産管理がきちんと区別されており、融資の判断がしやすいため、自分(社長)だけの個人保証で融資を受けられる場合が多くなります。

 

政府系の金融機関の融資制度を受けられる

創業系の融資制度とは、政府系の金融機関が、一般銀行がなかなかできない会社設立時の融資などを補完しているものです。事業実績のない会社設立時に、無担保無保証で融資をしてもらえる可能性があり、資金繰りに困っている場合などに利用すると便利です。個人事業主の場合にも、いくつか助成金・補助金はありますが、株式会社の方がその制度の種類が豊富で融資を受けやすくなっています。 

事業を始める際に、銀行から融資を受けやすくなることは、大変ありがたいことです。株式会社の場合、個人事業主に比べさまざまな融資制度があるのは、メリットといえます。

 

4.自己の不動産を会社に賃貸として貸せる

個人事業主の場合、自己や家族、親戚所有の不動産を事業で利用することは、必要経費としての負担になり、家賃については経費となりません。株式会社を設立すると、会社に自分や家族、親戚所有の不動産を賃貸として貸すことができ、その家賃は会社の経費にすることができます(もちろん、会社で利用していなければなりません)。

また、会社に自己所有の不動産を貸すことで、自分の会社に貸しているので、家賃滞納などの心配が無く、安心感があり、また青色申告特別控除などを適用することもできるため、個人の不動産所得の課税額を減らすこともできます。

 

5.売上から源泉所得税が引かれない

株式会社を設立すると、個人事業主と違って、売り上げから源泉所得税を引かれることはありません。個人事業主の場合は、報酬金額の約10%が源泉所得税として引かれていますが、株式会社の場合は、請求金額がそのまま全額入金されることになります。そのため、入金の管理がしやすく、資金繰りの計画が立てやすいというメリットがあります。

 

6.個人事業主に比べて生命保険や傷害保険への加入がお得になる

株式会社を設立した際に、会社名義で生命保険や傷害保険に加入すると、個人事業主と比べてお得になります。なぜなら、保険料の全額または一部を経費として計上でき、節税ができるからです。

個人名義の場合は、生命保険の場合のみ所得控除が適用で年間12万円までと決められています。また、株式会社の場合、会社が保険金の受取人となるので、保険料を全額経費計上していれば、保険金との差額は収益となります。そのため、株式会社で生命保険や傷害保険に加入すると退職金や資金に困ったときの原資として保険金を使用することもできます。

 

7.決算期を好きな時期に組める

株式会社を設立すると、決算期を好きな時期に組むことができるというメリットがあります。個人事業主の場合、決算期が1月1日から12月31日で、確定申告が翌年の3月15日までと決められていますが、株式会社の場合は、1年以内の決算期間であれば、会社の都合で、自由に決算期を決めることができ、決算期を2回行う事も可能です。

また、定款を変更することで、決算期の変更も行うことができます。そのため、繁忙期などを避けて決算期を決める会社がほとんどです。さらに確定申告についても、決算期間の末日から2ヶ月以内で選ぶことができます。また、会計審査を受けなければならない場合は、法人税、法人住民税、事業税に関しては、確定申告の期限を1ヶ月間まで伸ばすことも可能です。そのため、株式会社の方が、個人授業主に比べて決算期についての自由度が高いといえます。

 

8.個人事業主に比べて事業の承継がしやすい

株式会社を設立すると、代表者が変わる際に、個人事業主の場合よりも、スムーズに事業承継ができるというメリットがあります。株式会社が個人事業主よりも跡継ぎしやすいのは以下の理由が挙げられます。

 

個人事業主の場合

個人事業主の場合、事業者が死亡し事業を承継するといった際に、銀行の預金口座が凍結されてしまう恐れがあります。そうなると、支払いなどが滞ってしまい事業をストップさせなければならない事態になりかねません。

また、相続や離婚などが発生した場合は、銀行口座や不動産なども資産の分割が求められる事があります。個人事業主の場合、自分の財産と事業財産の区別がつきにくく、事業のために自分の財産を使用している場合もあるのでスムーズな承継が難しくなっています。

 

株式会社の場合

株式会社の場合、銀行の口座は、法人名義で使用しているため、自分(社長)の私的な理由で、口座凍結される事はほとんどありません。また、代表者が死亡した場合に、会社の資産が相続の対象となることもありません。株式会社の場合、個人の財産と事業財産が明確に区別されるため、個人の財産を会社に提供する必要がなく、事業の承継がしやすくなっています。(会社には相続税がかかりません

また、承継は会社の株式を移転することで行われており、株式を分割して少しずつ承継することが可能となります。そうすることで、自分が会社を承継する際に、何人かに、それぞれ得意な分野を分割して承継するといった事もできます。

こういったことから、事業を承継する際は、個人事業主より株式会社のほうがスムーズにでき、株式会社のメリットと言えます。

 

9.名刺に「社長」と書ける

株式会社を設立すると、名刺に「社長」と入れることができます。また登記を行っていれば、「代表取締役」や「取締役」といった表示も入れることも可能です。これらの表示は、個人事業主の場合は、誤解を招く恐れがあるとして、法的に禁止されています。

名詞に「社長(代表取締役)」と表記することで、取引の際に有利に働くことや、信用度が増すことがあるので、株式会社の1つのメリットといえます。

 

10.経営者も社会保険(健康保険+厚生年金保険)に入れる

株式会社を設立すると経営者も社会保険(健康保険+厚生年金保険)に加入することができます。個人事業主の場合は、雇っている労働者のみで、事業主は加入できません。また、株式会社で社会保険に加入すると、扶養家族も保険に加入することができます。月額給与によって保険料が決定されるため、扶養者の数が増えても、保険料は変わらず、また、加入者の配偶者は、国民年金3号被保険者となることも可能で、その際の厚生年金保険の保険料は一切かかりません。

社会保険は国民健康保険にない「傷病手当金」や「出産手当金」などの保証手当金があり、受給できる年金も国民年金より多くなっているので、経営者も社会保険に加入できるのは、株式会社のメリットになっています。

 

11.個人事業に比べて助成金の種類が豊富

株式会社を設立すると、助成金を受けやすくなるというメリットがあります。助成金は、融資と違って、厚生労働省からもらえる返却する必要のないお金です。一定の要件を満たす必要はありますが、ぜひ活用したいものです。個人事業主でも助成金はありますが、株式会社の方が、助成金の種類が豊富で、受けやすくなっています。以下に、株式会社を対象とした助成金の一部を紹介しています。

 

  • 受給資格者創業支援助成金

雇用保険の受給資格者が、創業後1年以内に雇用保険の適用事業の事業主となった場合に、事業主に対して創業に要した費用の一部(最大150万円)について助成する助成金。

 

  • 地域再生中小企業創業助成金

地域再生事業(雇用失業情勢の改善の動きが弱い地域において、地域再生のための雇用創出効果が高い重点産業分野に該当する事業)を行う法人を設立又は個人事業を開業し、就職を希望する者(65歳未満)を雇用保険の一般被保険者として2人以上雇用した場合に、新規の創業に係る経費及び労働者の雇入れについて給付される助成金。

この他にもさまざまな助成金がありますので詳しくは、厚生労働省のホームページをチェックしてみましょう。(厚生労働省事業主の方のための雇用関係助成金

 

12.個人事業の時の資産や負債を引き継げる

個人事業主から株式会社を設立すると、個人事業主の時の資産や負債を株式会社に引き継げるというメリットがあります。これは、「現物物資」とよばれ、株式会社の設立登記の際に、個人事業主時の資産や負債を資本金に組み込めるというものです。

個人事業主の事業で使用していたものを、そのまま使えるので、新しく物品などを買う必要もなく、会計上は中古としての扱いになる為、減価償却の際に有利に働きます。また、帳簿価額での引き継ぎの場合は、個人への税金は掛からないという点もメリットです。有形固定資産だけでなく、さまざまな債務(売掛金、買掛金、借入金、未払金)も引き継ぐことができるので、とても便利です。

 

 

株式会社設立の8のデメリット

設立のデメリット

株式会社を設立には、デメリットもあります。ここでは、個人事業主と比べた際の株式会社設立の8のデメリットを紹介していますので、確認してみてください。また、個人事業主とは違い、株式会社設立には費用が掛かります。費用面のデメリットに関しては「株式会社設立でかかる全費用について」を確認してみてください。

 

1.交際費は800万円までしか経費にできない

個人営業の場合、事業に関して使用した交際費はすべて経費にすることができますが、株式会社(中小企業)の場合は、交際費年間800万円までしか経費にすることができません。しかし、逆にいうと、株式会社の場合も年間800万円までは、交際費が経費にできるという事になります。これは国税局が定めているもので、「法人の交際費等の損金不算入制度」といいます。

適用期間は平成28年3月31日となっておりますが、延長される場合もあります。大企業の場合や資本金が1億円以上の中小企業は、交際費(接待飲食費)の50%を経費とすることができ、資本金が1億円以下の中小企業の場合は、交際費(接待飲食費)の50%を経費とするか交際費年間800万円を経費とするかの2つから選択することができます。

また、上記は、期間がある特例の制度ですが、1人あたり5000円までの事業にかかわる飲食費の場合は、交際費として経費とすることができます。ただ、個人事業主に比べると、制限があるので、株式会社のデメリットと言えます。

 

2.税務申告のための会計処理が複雑になる

株式会社を設立すると個人事業主に比べて事務負担が大きくなります。中でも、会計処理に関しては、法律に基づいて行わなければならず、決算書類や申告書の作成、納税額を決めるなど、複雑な手続きがあります。

そのため、パソコンの会計ソフトを使用する会社や、税理士などに依頼する会社がほとんどで、その分コストが掛かります。また、確定申告にあたり、帳簿付けの作業がありますが、帳簿の記入も複雑になっています。帳簿保管期間についても、個人事業主が7年間なのに対して、株式会社の場合は9年間と2年間長くなっており、会計処理に関する事務には、個人事業主に比べて、時間とコストがかかります

 

3.会社を乗っ取られる危険がある

株式会社は株式によって財産が管理されており、株式は自由に取引することができるため、株主が自分のみでない場合、株式を買い占められ、会社を乗っ取られる危険があります。例えば、友人らと共同出資をした場合などです。

しかし、それを防ぐため、「株式譲渡制限(非公開会社)」というものがあります。これは、会社の許可なしに株式を売ることを禁止しているものです。詳細は「公開会社と非公開会社(株式譲渡制限会社)とは?違いを説明」を確認してください。

これによって、自由に株式の売買をすることを防ぎ、会社が会社の経営に影響が出ない人を選ぶことができるので、乗っ取られる危険を回避できます。この制限を行う場合には、株式会社の設立時に定款に記すことが必要で、この制限をしていない場合は、会社の支配権を取られる危険があります。また、将来的に株式の公開を行う際には、「株式譲渡制限」をはずす必要があります。

 

4.株主総会を開かなければならない

株式会社を設立した場合は、どんな小さな会社でも、毎年1回株主総会を開かなければなりません。一般的には決算日から2ヶ月後に行われ、これを「定時株主総会」といいます。定時株主総会が行われなかった場合、100万円以下の過料になる場合があります。

また、株主総会を行った後は、議事録を作成し10年間会社に保管しておかなければなりません。株主総会は、会社を運営していく上で、大変重要ですが、株主が多い企業では、資料作りなど事前準備もあり、時間とコストも必要となってきます。(1人会社の場合はデメリットと言いにくいでしょう。)

 

5.社会保険への加入が義務づけられている

株式会社を設立すると、社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入が義務づけられています。個人事業主の場合は、国民健康保険と国民年金保険への加入になり、そもそも社会保険には加入できません。

社会保険は、法律で保険料率が定められており、保険料は従業員と会社が半分ずつ支払うためコストが掛かるというデメリットがあります。また、社会保険の中には、国民年金保険も含まれているため、株式会社のほうが、個人事業主に比べて保険料が高くなります。

 

6.確定申告後の還付加算金がなくなる

株式会社の場合、売り上げから源泉所得税が引かれることはありませんが、個人事業主が確定申告後に貰っている還付加算金(税金の還付につける利息)もなくなるというデメリットがあります。

個人事業主で商売している方で支払調書等から源泉されている場合が対象となり、基本的には納付する方が多いので、デメリットとは言いにくいでしょう。

 

7.さまざまなサービス料金が高くなる

株式会社の場合、個人の契約と比べて、さまざまなサービス料金が高くなる場合が多くなっています。例えば、自動車保険料やネットバンキングなどは、個人契約に比べると割高です。また、税理士のどの依頼料なども高くなっています。そのため、個人事業主と比べると、株式会社のデメリットと言えます。

 

8.会社の財産は株式の所有を通してしか管理できない

株式会社の財産は株式の所有を通してのみしか、管理ができません。そのため、自分が設立した株式会社の財産を、個人的な事に勝手に使うことはできません。また、親族以外でも後継者になることができるため、株式の管理をしっかり行っていなければ、会社を乗っ取られてしまう可能性もあります。 

 

まとめ

個人事業主(フリーランス)から、株式会社を設立するにあたって、どんなメリット、デメリットがあるのか、ここでは、12のメリットと8つのデメリットをご紹介しました。

株式会社の設立についは、株式会社でしか利用できない節税対策や信頼度の向上、融資や助成金などは、事業を行う上で大変重要になってきます。デメリットを避けるための制度や方法もあるので、それらもしっかり把握した上で考えることが必要です。

今のまま、個人事業主(フリーランス)でいたほうがいいのか、新たに株式会社を設立したほうがいいのか、今後の事業のあり方等で変わってきます。同じ事業でも、個人事業主と株式会社では損益が変わってくるので、注意が必要です。今回ご紹介した株式会社のメリットとデメリットを参考に、株式会社の設立について考えてみてください。

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